自分には本当の両親がいるという事実 それを自分だけが知らなかった。
「両方とも君の両親だからね どちらの家にも帰れるからね」と校長は言ってくれた。そして1日おきに両方の両親の元へ帰れば良いという配慮をしてくれた。小さな心を慮つたのでしょう。始めはその言葉通りにしていた。今日は書生さんのお迎えで医師の両親のもとへ 次の日は本当の両親のもとへと。
けどソノサンは結構オマセな子であつた。両方の家でこっちが好きという態度をとって両方を喜ばせた。両方の親の心遣いを感じ入ってそうせざるえなかった。そういう日々が続いて詰まるところ学校にも行きたくない 家にも帰りたくないという事態になってしまった。心が止まってしまったのだ。

そこで校長は提案した。「しばらく静養させてあげたら如何だろう」どちらの家もそれしか無いと思った。
校長の家には教員にはなったものの暫く休職している息子さんがいた。その人を付けて行けば学校に行かずとも学習に困る事はないと校長は言った。そうする事にした。
どんな所で過ごしたのかを私は聞きそびれたが 校長の息子さんと伊香保で暫く過ごしたそうです。心が前に進めるようになるにはどれ位の時が必要であったのか。同級生のトシさんの言葉の中に「帰ってきたのは2年生になってからだよー」というのがあった。
その後は本当の両親の元で暮らしたという。
私は「お医者さんの家にいた方が良かったんじゃないの?人生違ってたかもよ」というと
「それがね叔母が急に病気で亡くなってしまったのよ。だからもう一つの家が無くなってしまった。」選択の余地が無くなって その後は賑やかな沢山の兄姉達と本当の両親と一緒に暮らす事になった。そしてソノサンはその事実を60年も経って思い出したのです。私の知らないソノサンの人生の1ページ 本当は思い出したくないほどの記憶であったのかも知れません。 人生っていろんな事があるのですね。
一度だけ母親に連れられてその叔母の墓参りに行った覚えがあるそうです。場所も覚えていないと。記憶の向こうなのでしょう。
あの時に一緒に行ってくれた校長の息子さんもその後は元気に教師の日々を送っていたという事でした。彼も心が止まっていのでしょうか。校長さんもたいそう喜んだそうです。
2025 10.17 eimyo





マカタマノ

思案せねば








